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【WRAYCAM】シェーディング補正の効果と使用方法【MicroStudio】

顕微鏡写真の撮影には光の調整が非常に重要になってきますが、顕微鏡の照明の多くは中心が明るくなっているため、特に低倍率での観察時には視野(撮影範囲)中心と周辺部での光量差、いわゆる「光のむら」が起こることがあります。

顕微鏡のコンデンサ等で光束を絞り込んでいる場合は絞りを開放することで改善することもありますが、コンデンサの光束を対物レンズの視野が超過してしまっている場合や、カメラ・アダプタ倍率が適切ではなく撮影範囲が広すぎるためにケラレが生じかけている場合など、顕微鏡側のセッティングの変更や調整だけでは改善できないケースも考えられます。

このような撮影像上での光のむらを軽減するため、WRAYCAMシリーズの各ソフトウェアには「シェーディング補正」という機能が搭載されています。

本記事では、シェーディング補正の効果と使用方法について解説していきます。

FLOYD-2/2A/4Kでは、現状当該機能はご利用いただけません。

1. シェーディング補正とは

シェーディング補正は照明むらを軽減するための機能で、照明むらを撮影し、その明度を逆転させるフィルタをかけることで補正を行います。

あくまでも補正機能であるためすべての事象に対応できるわけではありませんが、撮影像の照明むらが気になる場合には、是非お試しいただきたい機能です。

2. シェーディング補正の使い方(MicroStudio)

現行のWRAYCAMシリーズ用制御ソフトウェアは大きく分けて2種類(MicroStudio・Spectman)ありますが、シェーディング補正機能が搭載されているのはウィンドウズ専用ソフトウェアMicroStudioのみです。

MicroStudioでのシェーディング補正の使用方法・操作は非常に簡単で、撮影像に照明むらがある場合、まず標本を光路から取り除き、撮影像を照明光のみの状態にします。

つぎに(1)キャプチャをクリックし、照明むらの画像を撮影します。この際に撮影する枚数は「サンプル枚数」にて設定可能ですが、基本的には初期値(5枚)で特に問題ありません。キャプチャされた画像は画面上には表示されず、内部的に保存されます。

キャプチャ後、(2)オンのチェックボックスをクリックし、チェックを入れることで照明むらが補正されます。

■シェーディング補正前

■シェーディング補正後

この状態で標本を光路に戻すことで、照明むらが補正された像が撮影できます。

落斜照明・反射照明の場合、基本的に「照明光のみ」という状態を作ることが出来ません。
白い紙などを映した状態でも、顕微鏡では繊維や僅かな異物等が映り込み、シェーディング補正用のキャプチャ撮影時にそれらを「影である」と認識してしまいます。
落斜照明使用時は出来るだけ模様や素材の映らない標本を用意したうえで焦点位置をあえてずらし、上記のような像を表示させてからキャプチャすることで上手くいく可能性が高くなります。

3. シェーディング補正の効果と使用例

実際にシェーディング補正を使用した場合の効果について、照明むらの程度ごとの使用例です。ご参考ください。

3-1. わずかに照明むらがある場合(透過照明)

透過照明での観察時、上画像のように四隅にわずかに照明むらがある場合です。

標本を撮影した際にも、やはり周辺部が少し暗く映ってしまっています。

シェーディング補正を適用すると、照明むらが補正され、全体的に均一な像が得られました。

3-2. わずかに照明むらがある場合(落射照明)

照明むらが軽微で、落射照明を使用している場合です。

■シェーディング補正前

撮影像辺縁部にわずかに照明むらがあり、影になっています。

■シェーディング補正後

シェーディング補正を適用することで、照明むらを軽減することが出来ました。

3-3. 照明むらがやや大きい場合(透過照明)

■やや大きい照明むら

透過照明使用時、3-1よりも照明むらが大きい場合です。

■シェーディング補正前

照明むらが大きい分、標本撮影時の辺縁部はかなり暗く、はっきりと影になってしまっています。

■シェーディング補正後

シェーディング補正を適用するとほぼ完全に照明むらが改善されました。

3-4. 照明むらが非常に大きい・ケラレが生じている場合(透過照明)

■非常に大きな照明むら

透過照明使用時、非常に大きな照明むらがある場合、もしくはケラレが生じているような場合です。

■シェーディング補正前

照明むらが大きすぎるため、辺縁部はかなり暗く、四隅はほぼ黒くつぶれたような像になっています。

■シェーディング補正後

シェーディング補正を適用することで四隅の像は得られましたが、中心部と影の光量差が大きすぎるため、均一な補正は出来ませんでした。

このレベルの照明むらやケラレが起きている場合、シェーディング補正を使用する前に、コンデンサの調整やカメラ用アダプタの見直し等、撮影環境を整えることを考えたほうが良さそうです。

3-5. 照明むらが非常に大きい・ケラレが生じている場合(落射照明)

落射照明使用時、大きな照明むらやケラレが生じている場合です。

■シェーディング補正前

四隅が完全にケラレた状態になっています。

■シェーディング補正後

シェーディング補正を行いましたが、やはり光量差が大きく、適切な補正が行えませんでした。

透過照明と同じく、ケラレがはっきりと生じているような場合には、まず撮影環境を見直しましょう。

3-6. 落射蛍光観察の場合

蛍光観察時の輝度むら・輝度勾配が顕著な場合にも、シェーディング補正を実行することで軽減できる場合があります。

蛍光観察の場合、標本の無い状態もしくは焦点位置をずらし、上図のような状態にしてからシェーディング補正用のキャプチャを行います。

中央の輝点による輝度勾配が軽減されました。